何をシミュレーションしているか
各時間ステップで制御器が周波数を計算し、現在の負荷のゲインカーブからその周波数でのタンクゲインを読みます。そのゲインに入力電圧を掛けて巻数比で割った値が出力コンデンサに流し込む電流を決め、残りはコンデンサ、ESR、負荷抵抗が決めます。動作点の近くで線形化すると LLC ループ計算機と同じ小信号プラントになるため、同じ設計とゲインなら、ここに表示される位相余裕はその計算機の値と一致します。
周波数が変わってもタンクの出力はすぐには変わりません。この実習ではその包絡線の遅れを、ビート周波数 |f_s − f_r|(最小で f_r の 5 %)の二重極で近似しています。LLC ループ計算機のオプションと同じ近似です。ビート周波数の考え方は共振形コンバータの拡張記述関数(EDF)解析に由来し、固定した二重極一つはその大まかな代用にすぎないので、リンギングの正確な形は参考程度に見てください。このオプションを切ると理想的なタンクでのループを確認できます。
プラントゲインが負になる理由
ゲインピークの右側では、周波数を上げるとゲインが下がります。出力が低ければ制御器は周波数を下げなければなりません。ここでの PI は通常どおり誤差から計算し、符号を反転して開始周波数に加えます。これはプラントゲインを負として扱うのと同じです。定格負荷シナリオの周波数波形を見ると、負荷が減って出力が上がったとき周波数が上に跳ねます。
共振点(f_s/f_r = 1)ではすべての負荷のカーブがゲイン 1 を通ります。入力 390 V、n = 4 では必要ゲインが 0.985 なので、共振点のすぐ上で動作し、そこでは負荷ごとのカーブがほぼ重なります。定格入力で負荷ステップが出力を一瞬しか乱さないのはこのためです。タンクの包絡線が追いつけば、ほぼ同じ周波数で再び 48 V が出ます。
軽負荷でループが遅くなる理由
軽負荷では共振点より上のゲインカーブが平らになり、周波数を変えても出力の変化がずっと小さくなります。プラントゲインは傾き dV_out/df_s で決まります。基準ゲインのままだと、クロスオーバーは 500 W の 2 kHz から負荷 10 %、400 V の約 220 Hz まで下がり、位相余裕も約 36° に減ります。軽負荷シナリオを時間ウィンドウ 50 ms で動かし、定格の場合と比べてみてください。
よく使われる対策はゲインスケジューリング、入力電圧フィードフォワード、ごく軽い負荷でのバーストモードです。この実習にはバーストモードは含まれていません。
容量性領域と周波数制限
入力電圧を下げると必要ゲインが上がり、動作点はカーブに沿ってピークの方へ登ります。さらに過負荷が加わるとピークそのものが低くなります。過渡時に周波数がピークより下に押されると傾きが反転し、周波数を下げるとかえって出力が下がり、制御器は誤った方向へ押し続け、ブリッジはゼロ電圧スイッチングを失います。シミュレーションはその瞬間に止まり、理由を表示します。
実際の LLC 制御器は、最悪条件のカーブ(最低入力、最大負荷)のピークより上に最低周波数の制限を設けてこれを防ぎ、通常は過電流保護と組み合わせます。制限をオンにしてピークより低く設定すると、位置の悪い制限が役に立たないことがわかります。
試してみること
Kp と Ki を一緒に約 3 倍にし、負荷を 60 % から 100 % にステップさせてください。全負荷での位相余裕が負になり、出力と周波数は周波数制限にかかるまで振動します。同じゲインで遅延を 15 µs から 40 µs に増やすと余裕が減るのも確認できます。次に軽負荷の動作点で「再調整」を押してから全負荷へステップさせると、一点だけで調整しても足りない理由がわかります。
同じループを周波数領域で見るには LLC PI ループ計算機を、タンクそのものは LLC 設計計算機を使ってください。LLC 電圧ループと LLC ゲインカーブのガイドに背景の説明があります。参考文献:B. Yang, F. C. Lee ほか、'LLC resonant converter for front end DC/DC conversion'、IEEE APEC 2002;S. Abdel-Rahman、'Resonant LLC Converter: Operation and Design'、Infineon アプリケーションノート AN 2012-09。
アニメーションはこのページに示した式どおりに描いています。教科書やソフトウェアライブラリによって規約が異なるので、数値を比べる前に使っているコードの規約を確認してください。