動作原理
MOSFETの損失は、依存するものが異なる項に分かれます。導通損失はI_rms²とR_ds(on)に従い、温度とともに増えます。スイッチング損失はV_ds、エッジでの電流、f_sに従います。各項をデータシートの値で計算するので、どこから手を付けるべきかが分かります。
スイッチング時間はゲート電荷から求めます。ミラープラトーの間、ゲート電流はターンオンで(V_drv − V_pl)/R_g、ターンオフでV_pl/R_gです。Q_gdをこの電流で割ると電圧遷移時間になります。電流遷移にはQ_gsのうちV_thからプラトーまでの分を使い、Q_gs·(V_pl − V_th)/V_plで見積もります。
ハーフブリッジの二つの位置は大きく異なります。ハードスイッチングFETはV·I交差、C_ossエネルギー、反対側ダイオードの回復電荷を引き受けます。同期FETは電圧がほとんどない状態でオンオフするため、導通とデッドタイムごとの短いダイオード区間だけです。同期FETのQ_rrとE_ossも実際の損失ですが、熱になるのは他方のデバイスです。このパッケージ内の熱だけがこのT_jを決めるので、両者を分けて示します。
R_ds(on)はT_jに依存し、T_jは損失に依存するため、値が落ち着くまで反復します。スイープは周波数ごとにこれを繰り返し、周波数比例損失が導通損失を超える点を求めます。
設計手順
- 1損失が最大になる条件で動作点を入力します。降圧なら通常は最大電流と最大入力電圧です。
- 2Q_gs、Q_gd、V_pl、Q_rrを実際の電圧・電流に近いデータシート条件で読みます。
- 3最大の項を確認します。導通ならR_ds(on)を下げるのが有効です。スイッチングなら、R_ds(on)の低い部品はゲート電荷が大きいことが多く、かえって悪化する場合があります。
- 4スイッチングが支配的ならR_gかf_sを下げます。R_gを変えたらリンギングとデッドタイムを再確認します。
- 5同期FETのデッドタイムはデッドタイム計算機で詰め、実際の放熱経路は熱計算機で確認します。
- 6スイッチングの数値を信頼する前にダブルパルス試験で確認します。
計算式
- 導通
- P_cond = I_rms² · R25 · (1 + α·(T_j − 25))
- ターンオン時間
- Q_gs2 ≈ Q_gs·(V_pl − V_th)/V_pl; t_ri = R_g·Q_gs2/(V_drv − V_pl); t_fv = R_g·Q_gd/(V_drv − V_pl)
- ターンオフ時間
- t_rv = R_g·Q_gd/V_pl; t_fi = R_g·Q_gs2/V_pl
- ハードスイッチング損失
- P_sw = ½·V_ds·I_on·(t_ri + t_fv)·f_s + ½·V_ds·I_off·(t_rv + t_fi)·f_s
- 出力容量
- P_oss = E_oss·f_s = ½·C_oss(er)·V_ds²·f_s
- ボディダイオード
- P_D = V_f·(I_on + I_off)·t_dead·f_s; P_rr = Q_rr·V_ds·f_s
- ゲート駆動
- P_gate = Q_g·V_drv·f_s
- 接合温度
- T_j = T_a + P(T_j)·R_thJA
計算例
48 Vから12 Vへの10 A同期降圧を考えます。リップル3 A、200 kHz、D = 0.25です。デバイス値は特定の部品ではなく説明用の100 V FETです:25 °Cで5 mΩ、α = 0.4 %/K、Q_g 60 nC、Q_gs 18 nC、Q_gd 12 nC、V_th 3 V、V_pl 4.8 V、駆動10 V、5 Ω、C_oss(er) 400 pF、V_f 0.9 V、Q_rr 60 nC、デッドタイム60 ns、周囲50 °C、20 K/W。ハードスイッチングFETはt_ri 6.5 ns、t_fv 11.5 ns、t_rv 12.5 ns、t_fi 7.0 nsです。ターンオン0.74 W、ターンオフ1.08 W、C_oss 0.09 W、逆回復0.58 Wに対し、導通は5.02 A rmsで0.17 Wだけです。合計2.65 W、T_jは102.9 °Cです。スイッチング損失は約11 kHzで導通損失を超え、同じ部品は500 kHzで178 °Cに達します。同期FETは8.69 A rmsを流し、T_j 63.0 °Cで導通0.44 Wです。ダイオードはデッドタイムで0.22 Wを加え、他方のFETに0.58 Wの逆回復損失を生じます。チャネルの0.44 Wに対してボディダイオード分は0.79 Wで、予想より大きいのが普通です。
よくある間違い
- 25 °CのR_ds(on)で熱設計をすること。接合100 °Cでこの部品は約30 %高くなります。
- データシートのR_thJAが自分の基板にも当てはまると考えること。これは指定の試験基板での値です。熱測定かヒートシンク経路の計算に置き換えます。
- Q_rrを省くこと。この例では逆回復損失がハードスイッチングFETの導通損失より大きくなります。
- 非線形C_ossでQ_oss·VとE_ossを区別しないこと。両者は異なり、スーパージャンクション品で差が最大です。
- このスイッチング時間を正確な値とみなすこと。ソースインダクタンス、ゲートループのリンギング、V_dsによるQ_gdの変化を無視しています。
よくある質問
スイッチング損失の精度はどの程度ですか?
±50 %と考えてください。ゲート電荷による見積もりはパッケージと配線のインダクタンスを無視し、データシートのQ_gdは一つの電圧と電流での値です。部品の比較と主な項の特定には十分です。実際のエネルギーはダブルパルス測定で得られます。
同期FETのスイッチング損失はなぜゼロですか?
チャネルがオンする時点でボディダイオードがすでに導通し、チャネルがオフするとダイオードが電流を引き継ぎます。エッジ中の電圧は1 V程度なのでV·I交差は無視できます。関係する損失はダイオード導通、逆回復、C_ossです。
Q_rrの損失はどこで発生しますか?
大部分はハードスイッチングFETです。バス電圧の多くを支えたまま回復電荷を供給するためです。ダイオードはスナップオフ時に小さな分を受け持ちます。計算機はQ_rr·V_ds·f_sをすべてハードスイッチング側に計上するので、そのデバイスにはやや保守的、同期FETにはやや楽観的です。
C_oss(er)とC_oss(tr)の違いは何ですか?
C_oss(er)はエネルギー基準の値で、ある電圧で非線形C_ossと同じエネルギーを蓄える一定容量です。C_oss(tr)は同じ電荷を与える時間基準の値です。損失にはエネルギー基準の値を使います。
SiCやGaNにも使えますか?
構造は同じですが各項の確認が必要です。SiCのボディダイオードはV_fが3~4 V程度と高く、デッドタイムの影響が大きくなります。GaNには通常の意味のQ_rrがなく、逆方向電圧がゲート駆動で変わるので、データシートに合わせてV_fとQ_rrを設定してください。
参考文献
- D. Graovac, M. Pürschel, A. Kiep, "MOSFET Power Losses Calculation Using the Data-Sheet Parameters," Infineon Technologies, Application Note, V1.1, 2006.
計算結果は工学的な推定値です。データシート、シミュレーション、実測で設計を確認してください。