動作原理
平均電流モード PFC は、速さが大きく異なる 2 つのループで動作します。内側の電流ループはインダクタ電流を正弦波の基準に追従させるため、kHz 帯の帯域が必要です。外側の電圧ループは V_out を保つようにその基準の振幅を決めますが、出力コンデンサには商用周波数の 2 倍のリップルが常にあるため、遅くなければなりません。
モデルは Todd の UC3854 アプリケーションノート(Unitrode U-134、TI SLUA144)に従い、入力ピークで線形化した平均化モデルです。L–C_o 共振とスイッチング周波数の間では、電流アンプ出力から検出電流までは積分器 V_out·R_s/(V_s·s·L) に見えます。U-134 は、増幅したインダクタ電流の下降傾きが PWM ランプの傾きを超えないように電流アンプの中域ゲインも制限しており、この制限でのクロスオーバーは f_s/(2π) になります。
電圧ループでは、乗算器、二乗器、除算器が電圧アンプ出力を電力指令に変えます。ΔV_vea の出力変化が入力電力 0 から定格までに対応します。定電力負荷(後段の DC-DC)ならプラントは U-134 と同じく積分器 P_in/(ΔV_vea·V_out·s·C_o) で、抵抗負荷なら 2/(R·C_o) に極が 1 つ加わります。
2 つの補償器はどちらもオペアンプの Type II 回路で、目標のクロスオーバーと位相余裕から Venable の k ファクタで値を決め、標準値に丸めます。出力リップル V_o,pk = P_in/(2π·2f_line·C_o·V_out) は電圧アンプを通り、V_vea に残った分が電流基準を揺らします。U-134 によると、その % の約半分が入力電流の 3 次高調波として現れます。Type II の式の G_c は補償器に必要な中域ゲイン G_c = 1/|G(j·2π·f_c)| で、f_c でループの大きさを 1 にします。
設計手順
- 1電力段とコントローラの定数を入力します。ランプ振幅 V_s と電圧アンプの出力範囲 ΔV_vea はコントローラのデータシートで確認します。
- 2電流ループのクロスオーバーを f_s/10 前後に決め、計算した中域ゲインが傾き制限内にあることを確認します。
- 3電圧ループのクロスオーバーは通常 10 Hz 前後で f_line/4 より低くし、位相余裕は 45°〜60° にします。
- 4電圧アンプ出力の 2·f_line リップルと 3 次高調波の推定値を確認します。大きすぎる場合は電圧ループのクロスオーバーを下げるか C_o を増やします。
- 5標準値の部品で、両方の商用周波数で余裕を確認し、負荷の種類がはっきりしなければ両方の負荷モデルでも確認します。
計算式
- 電流ループのプラント
- V_rs / V_cea = V_out·R_s / (V_s·s·L)
- 電流アンプの傾き制限
- G_ca,max = V_s·L·f_s / (V_out·R_s), この利得での f_ci = V_out·R_s·G_ca / (2π·L·V_s) = f_s/(2π)
- 電圧ループのプラント(電力バランス)
- V_out / V_vea = P_in / (ΔV_vea·V_out·s·C_o) (定電力負荷); (P_in/(ΔV_vea·V_out))·R/(2 + s·R·C_o), R = V_out²/P_out (抵抗負荷)
- k ファクタによる Type II
- boost = PM − 90° − ∠G(j·2π·f_c), G_c = 1/|G(j·2π·f_c)|, k = tan(boost/2 + 45°); C2 = 1/(k·ω_c·R1·G_c), C1 = C2·(k² − 1), R2 = k/(ω_c·C1)
- 2 次高調波リップル
- V_o,pk = P_in / (2π·2f_line·C_o·V_out), V_vea,pk = V_o,pk·|Gc(j·2π·2f_line)|
- 出力リップルによる 3 次高調波
- 第 3 高調波 ≈ ½ · (V_vea,pk / ΔV_vea) · 100 %
計算例
U-134 の既定値(400 V、250 W、100 kHz、1 mH、450 µF、R_s = 0.25 Ω、V_s = 5.2 V、ΔV_vea = 4 V、60 Hz)では、傾き制限による電流アンプのゲイン上限は 5.2 です。位相余裕 60° の 10 kHz 電流ループは k = 3.73 で、R_ci = 3.9 kΩ なら標準値 R2 = 13 kΩ、C1 = 4.7 nF、C2 = 330 pF により 9.60 kHz、61.2° となり、中域ゲイン 3.33 は制限内です。電圧ループを 10 Hz、45°(k = 2.41、R_vi = 511 kΩ)とすると部品は 110 kΩ、330 nF、68 nF で、10.0 Hz、45.0° になります。出力リップルは 1.84 V ピークで、アンプは 120 Hz でその 0.0373 倍だけを通し、V_vea には 68.8 mV、つまり ΔV_vea の 1.72 % が残ります。これは約 0.86 % の 3 次高調波に相当します。
よくある間違い
- 過渡応答だけを見て電圧ループを設計すること。クロスオーバーが 2·f_line に近いと、出力リップルがそのまま入力電流に入ります。
- 電流アンプの傾き制限を見落とすこと。平均化モデルでは安定に見えても、ゼロクロス付近で波形が崩れることがあります。
- 電圧ループのゲインが P_in に比例することを忘れること。入力フィードフォワードがないとゲインは入力電圧の二乗にも比例し、UC3854 の二乗器と除算器がこの依存性を取り除きます。
- 3 次高調波の推定値を歪み予算のすべてとみなすこと。フィードフォワードのリップル、ゼロクロス付近のカスプ歪み、入力フィルタが加わります。
よくある質問
U-134 の例と比べるとどうですか?
既定値がその例です。ノートの式の結果はそのまま再現できます。アンプゲイン 5.2、f_ci 15.9 kHz(R_cz を 20 kΩ に丸めると 15.7 kHz)、C_cz ≈ 507 pF、V_o,pk = 1.84 V、G_va = 0.0326、f_vi = 19.1 Hz です。ノートが最終的に選んだ部品でループ全体を計算すると 17.5 kHz・46.7° と 14.9 Hz・52.5° になり、これはノートの式が漸近線に基づいているためです。
電圧ループはなぜこれほど遅くする必要があるのですか?
2·f_line の出力リップルは通常動作の一部です。電圧アンプがその周波数で通す分だけ電流基準が揺れ、入力電流に 3 次高調波として現れるため、クロスオーバーは 2·f_line よりかなり低く、通常は 10 Hz 前後にします。
電流アンプにはなぜゲインの上限があるのですか?
PWM コンパレータは増幅した電流信号をランプと比較します。増幅したインダクタ電流の下降傾きがランプより急だと、変調器が周期ごとに状態を行き来することがあります。U-134 は入力電圧が 0 付近の最悪条件で 2 つの傾きが等しくなるように中域ゲインを決めます。
負荷は定電力と抵抗のどちらでモデル化すべきですか?
PFC の後ろには通常、定電力負荷である DC-DC コンバータがつながるので、プラントは U-134 と同じ純粋な積分器です。抵抗負荷は 2/(R·C_o) の極によって減衰を加え、低周波の位相遅れが少し小さくなります。
計算結果は工学的な推定値です。データシート、シミュレーション、実測で設計を確認してください。